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電話相談員インタビュー(看護師編)

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疾患ではなく、人を看る。その原点に戻れる場所。

こうきさん(40代)は、看護師の資格を持ち、主に精神科領域での看護師として従事しています。#いのちSOS電話相談としては、2年半の活動です。

─── 本日はどうぞよろしくお願いします。さっそくですが、こうきさんが「#いのちSOS」の電話相談員になろうと思われたきっかけについてお聞かせいただけますか?

私は看護師としての職務の中で、自身の心の中に、どうしようもないほどの閉塞感や、漠然とした葛藤のようなものがずっとくすぶっていました。少し燃え尽き症候群のような感じだったかもしれません。 その時に、#いのちSOS電話相談で活動している知人から#いのちSOS電話相談が相談員募集していることを教えてもらったことがきっかけでした。その時は特に他の電話相談や自殺相談については調べませんでした。

「こうあるべき」に縛られ、苦しいがどうしたらいいか分からなかった中で、生きづらさを感じている今だから何か社会に還元できる新しいことをするとよいのではないかと考えました。また、「他人を知ることが自分を知ることにつながるのではないか」という気持ちも大きかったと思います。

電話相談員になる前のイメージとしては、もっと「指示的」で、手を差し伸べてただ話を聞くだけでなく、相談者に代わって何かをしてあげたり、守ってあげるような「愛護的」なものだと思っていました。

─── 実際に相談員の仕事をしてみて感じたこと、考えたことを教えてください。

実際に相談員をやってみて感じたのは、電話相談を通じて少しずつ「相談者を知る」ことができるようになっていくと、それが自分を理解することにつながり、またそうするとさらに相談者についての理解が深まることを実感しました。

特に大きな気づきは、「死」を考えることは、実は「生」を考えることの裏返しなのではないかということでした。これまでは「生きる」という一側面だけを見ていたために相談者はもちろんですが、自分も生きづらさを感じていたのだと理解しました。社会や家族、関係性の中で「こう生きなければならない」「死んではいけない」「死を考えるのは悪いことだ」といった同調圧力や固定観念に縛られていた部分が、「死」という選択肢、あるいは「死」について相談者と対話することによって、相談者が「生きづらさ」から解放され、「生きてもいいのかもしれない」という自由な感覚を得ることができると相談者とともに感じるようになりました。

─── 電話相談員の経験は、こうきさんご自身のキャリアや専門性にどのように影響を与えていると感じますか?

私は精神科の看護師として働いています。これまでのキャリアの中で勤めてきた精神科病院では、患者さんへの関わり方が非常に「管理的」で、「パターナリスティック」、つまり上から管理するという側面が強かったと感じています。人間そのものというよりも、疾患を相手にしているような自分や環境に、いいようのない苦しさを感じていました。

しかし、#いのちSOS電話相談の活動をはじめてからは、「対等に人と接する」ことや、「一対一で言葉を重ねて対話し、深める」ことの大切さを改めて実感しています。看護の世界では「一対多」で関わることが多い中で、ここでは「一対一」で深く対話できることが、これほど重要だったのだと気づきました。

この経験は、私の看護師としての仕事に大きな影響を与えています。管理的な側面ももちろん必要ですが、対等性を持って対応することで、患者さんを「本当に一人の人間」として理解し、関わる感覚を培うことができています。これにより、患者さんとの間に「絆」が生まれたり、「信頼」されるようになったりと、治療的関係が非常に良いものになったと感じています。看護師として抱えていた自己矛盾に気づき、それを言葉にできるようになったことも、私にとって大きな経験でした。

─── ライフリンクの働きやすさについてはいかがでしょう。

ライフリンクの電話相談員は、皆さん切磋琢磨し、向上心を持って共通のビジョンに向かっていると感じます。私自身、心の中に抱えていた思いの一つとして「仲間が欲しかった」という気持ちがあったのですが、同じ方向を向いている「同志」のような仲間ができたことは、生きがいにもつながっています。

また、非常に勉強させてもらえる環境だと感じています。研修が充実しており、フィードバックも丁寧なので、自分の現在の位置を客観的に理解することができます。こうした点が、私にとっての「働きやすさ」だと感じています。自分自身の専門性を高めながら活動できることに、とても喜びを感じています。精神科医療領域とは親和性が高く、スキルアップもできると強く感じています。


─── 最後に、これから電話相談員を目指そうと考えている方、特に看護師の方にむけて、こうきさんのメッセージや今後の抱負をお願いします。

看護師の皆さんにお伝えしたいのは、電話相談員という仕事は、自分を高めたい方、そしてコミュニケーションを通じた患者さんの理解や、対話を用いた援助やケアを深めたい方にとって、非常に学びが多いということです。そうした思いを抱えながらも、どこにその機会があるのか分からないと感じている看護師の方々には、ぜひ挑戦していただきたいと強く思います。

私自身の抱負としては、最近ライフリンクの研修で臨床心理学的な概念を学ぶ機会があり、非常に興味が湧きました。今後、体系的に臨床心理学を学ぶことが、もっと深い人間理解につながるのではないかという、底知れない楽しみや興味を感じています。

深い「人間理解」は、相談者の理解につながり、そして自分自身の理解にもつながっていくでしょう。この電話相談員の活動を通じて、私は「一対一で対話をする」「一人の人間として向き合い続ける」という時間を何よりも大切にしたいと考えています。

技術や情報だけでは到達できない、人間同士の深く温かい「理解」と「つながり」を築くこと。これこそが、電話相談員の仕事の核であり、今後も追求していきたい私の目標です。

─── インタビューを通して、死に対する固定観念なしであるがままに相手を理解し、人間同士の血の通った温かいつながりを築きたいという熱い思いを感じました。そしてまた同じ理念の基につどった同志を得たことが、生きがいにまでなっているのは、より人間的なケアを追求していきたいこうきさんだからこそなのだと感じました。こうきさん、本日は貴重なお話をありがとうございました。

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