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電話相談員インタビュー(心理院生編)

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「声だけで、心を見つめる」─ 彼女が電話相談で知った臨床の核心

ほなみさんは、臨床心理学を専攻する博士課程前期1年生です。#いのちSOS電話相談員としての活動は3ヶ月のインターン研修を終えて、2ヶ月目です。

─── インタビューの機会をいただきありがとうございます。ほなみさんが#いのちSOSの電話相談員になろうと思われたきっかけについてお聞かせいただけますか。

身近に大切な人を亡くした経験があるわけではないのですが、芸能人の方のニュースを見たり、大学で心理学を学ぶ中で、誰にも相談できずに亡くなる方がいるという現実を知ったことが大きいと思います。以前、チャット相談のボランティアをしていた経験があるんです。その中で、将来的には臨床心理士になりたいという思いが強くなり、テキストでの相談だけでなく、「声」を通してのやり取りも経験したいと考えるようになりました。そこで電話相談について調べているうちに、「#いのちSOS」を見つけました。

特に死にたいという思いは、相談者の思いが複雑に絡み合っていると感じ、その思いに関わることの難しさを感じていました。チャット相談では時間をかけて返信できる利点がある一方で、得られる情報が限られる部分もあります。電話相談では、声でのやり取りによって、言葉だけでは伝わらない非言語の情報が増えてきます。音声から相談者の言葉の裏に隠された気持ちのようなものを、より深く想像し相談者と対話したいと思いました。それがもし、少しでも相談する人の電話をかけてくる力になるのであればと想像したんです。

─── 実際に電話相談員をされてみて、以前と比べて感じたことや考えたことの違いはありますか?

本当に、想像以上に難しい、というのが正直な感想です。相談者の言葉通りの内容を理解し、共感的に「確かにそういう気持ちになるな」と感じるまではできるんです。ですが、そこから自殺に至るまでの思いを想像し、対話を重ねることが本当に難しいと感じています。やりたいのにできないもどかしさを常に感じています。

自殺予防のための電話相談は、やはり緊急度や深刻度が高いと感じています。だからこそ、相談者のどんなに小さなサインも見落とさないようにしなければなりません。全身全霊で相手を「聴く」「体験する」「見る」ことで、まるで相手になったかのように感じる。それがこの仕事に求められることだと、今感じ始めています。

─── ほなみさんは臨床心理士を目指していらっしゃるということですが、電話相談員の経験が、大学院での学びや将来のキャリアにどのような影響を与えていると感じますか?

大学院での学びはほとんど対面での面接が中心なので、電話相談を経験することで、「声」や「環境音」といった非言語の情報に意識を向ける機会が増えました。まだ完璧にできているわけではありませんが、非言語に注意を払えるようになる環境だと感じています。

もし対面での面接であれば、相談する人の表情や姿勢など、目に見える情報も多くありますよね。この対面で情報を得る経験と、電話相談で培われる、声や環境音から情報を得る経験とを将来的に組み合わせることができたら、相談者をより深く理解できるようになるのではないかと考えています。目指すのは、言葉だけでなく、まさに五感で相手を感じ取ることです。そうすることで、言葉にされない部分での理解や繋がりが深まる可能性を感じています。

また、電話相談は、基本的に一度きりの短い時間でのやり取りで、情報も限られています。心理面接のようにインテーク(初回面接)で詳細な情報を聞くこともできません。この限られた情報の中で、相談者が本当に伝えたいこと、言葉の裏にある思いを想像する力が強く試されていると感じます。相談する人が話す断片的な情報から想像を巡らせ、相手の立場に立って考え、見立てを立てて対話を繰り返すというプロセスは、心理士としての専門性を高める上で非常に重要だと感じています。

ちょうど大学院の授業で、感情に焦点を当てる新しい心理療法を学んだのですが、そこで得た感情への理解を、この電話相談の中でも実践的に活用していけたらと考えています。

さらに、この仕事を通じて、相談する人、一人ひとりが本当に様々な心の在り様を持たれていて、それをその一人ひとりが異なる声の形で伝えてくれようとしているのだということを知りました。そしてまた相談室には相談できない方や、相談室という対面では伝えられない声の形に向き合うことは、心理士という専門職の存在意義を自身に強く問う場となっています。そうした中で、将来的な自身の専門性や進むべき領域をも真摯に見つめる機会ともなっていることは、今後の職業人生にとってありがたいことだとも感じています。

─── ライフリンクでの働きやすさについてはいかがですか?まだ短い期間かもしれませんが、感じていることがあれば教えてください。

ライフリンクの働きやすさで一番大きいのは、最初のインターンでの研修が非常に充実していたことです。準備をしっかりとさせてもらえたので、安心して相談を始められたと感じています。

電話相談員は、始めたばかりですと、一人で上達していくのは至難の業だと痛感しています。だからこそ、研修だけでなく、スーパーバイザーから、常に自分の不安を聞いてもらったり、相談対応についてフィードバックを受けられる環境があるのは非常にありがたいです。

自分だけでは気づけない改善点も、サポートを通じて発見できる。これは電話相談員としてだけでなく、将来心理士として活動していく上でも、自己の気づきを深めるための貴重な場所であり、体験だと感じています。

また、勤務体制の柔軟さも大きなメリットです。自分の状況に合わせて働き方を調整できる選択肢の多さは、本当に助かっています。


─── 最後に、これから電話相談員を目指そうと考えている方、特に大学院生や将来心理士になりたいと思っている方に向けて、ほなみさんからのメッセージや、今後の抱負をお願いします。

特に大学院生の方にとって、相談のケースを持つ機会は限られています。電話相談では、一度きりの限られた時間の中で、本当に多種多様な相談者と出会い、その声に耳を傾けることができます。社会の様々な側面を肌で感じることができるんです。この経験は、人間として、そして専門家として、かけがえのない経験になると思います。

周囲には隠してきた、あるいは強く見せてきたけれど受け止めてもらえなかった気持ちを、匿名で、知らない誰かに話せる場所、それが電話相談だと思うんです。知らないからこそ、強がらずに本音を見せられる部分もある。これからも、もっと相談者の心の奥底にある思いを汲み取れるよう、そして、その方が少しでも安心して自分を表現できるような存在になれるよう、努力を続けていきたいと思っています。

─── ほなみさんの言葉一つひとつに、相談者が少しでも安心して自分を表現できるような存在になりたい、これからも努力を続けていきたいというまっすぐな思いがほとばしっているのを感じました。本日はどうもありがとうございました。

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